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中室教授がトイサブ!と一緒に考える、おもちゃと保育の未来 | 教育経済学から見る幼児教育③

中室教授がトイサブ!と一緒に考える、おもちゃと保育の未来 | 教育経済学から見る幼児教育③

2023/07/21

ここまで「教育経済学」や「非認知能力」など、幼児教育において、知っておきたい知識を提供してくれてきた慶應義塾大学総合政策学部の中室牧子教授。実は現在、トイサブ!とも共同研究をおこなっています。中室先生が知育おもちゃを通じて実現しようとしている、保育環境の質を高める考えとは?

保育所における保育の質を数値化
質のばらつきを研究を通じて改善する

――中室教授とトイサブ!の共同研究「知育おもちゃの適時適切な利用による成長発達の効果」について教えてください。

私たちの研究グループはかねてから、幼児教育の「質」を計測するという研究を実施してきました。ヘックマンの研究は質の高い幼児教育を受けた子どもたちが受けなかった子どもたちよりも将来の学歴、所得、生活の状況が恵まれていたことを示した研究ですが、現代の日本では3歳以上の子どもたちはほぼ全員が幼稚園か保育所に通っている状態で、通っていない子どもがほとんどいません。ですから、どの保育所の保育の質が高いのか、ということが重要になってくるわけです。私たちは複数の自治体と共同で、世界的にも広く用いられている「保育環境評価スケール」という評価方法を用いて、保育の質を数値化することを試みてきました。

調査員を数名保育所に派遣して、約500近い項目について、保育所の中で実施されているかどうかチェックを付けて行くことで、質を測ることができます。この方法を用いて計測してみると、日本の保育の質は海外と比較して決して低くはないこと、同じ自治体の認可保育所であっても質にはかなりばらつきがあること、そして質の中でも特に「活動」として分類される側面に課題があることがわかってきました。

「活動」というのは、例えば微細運動、造形、音楽やリズム、積み木、ごっこ遊び、自然科学、数字を使った遊びなどが展開されているかどうかということを評価しています。意外なことですが、多くの保育所ではこの活動のスコアが低くなってしまっています。しかし、私たちが実施した研究では、この「活動」のスコアは、就学後の算数の学力との関連が強いことがわかっています。ですから、この「活動」のスコアを改善するようなお手伝いができないかと考えてきたのです。そこでトイサブ!と相談して、保育所に知育おもちゃを提供することを通じて、保育所の微細運動、造形、音楽やリズム、積み木、ごっこ遊び、自然科学、数字を使った遊びなどが促すことができないかと考えました。これが今回の研究に繋がっています。

知育おもちゃで保育環境の質を高め
日本の幼児教育への貢献を目指す

 

――トイサブ!との取り組みにおける展望などもあれば教えてください。

「保育環境評価スケール」における「活動」は、「子どもたちが物に触れ、関わり、作り、学びに向かう力を育てる」ことが出来ているかどうかを評価しています。ですから、単純に保育者や親とのかかわりだけではなく、何らかの「物」が必要だと考えています。今回の研究を通じ、知育おもちゃが保育環境の質を高め、それを通じて子どもたちの発達や行動面での成長を助けることができるかどうかを科学的に検証することを通じ、トイサブ!とともに、日本の幼児教育に貢献したいと考えています。

――トイサブ!との共同研究、日本の幼児教育にどういった影響を与えていくのか今から楽しみですね!

中室教授の短期連載は今回で完結となります。過去のインタビューをまだ読んでない方は、以下のリンクよりぜひご覧ください。

PROFILE

中室牧子

慶應義塾大学総合政策学部教授、東京財団政策研究所研究主幹

1998年慶應義塾大学卒業。アメリカ・ニューヨーク市のコロンビア大学で博士号を取得(Ph.D)。日本銀行や世界銀行での実務経験を経て、2013年から慶應義塾大学総合政策学部准教授に就任。2013年から慶應義塾大学総合政策学部准教授。2019年から同学部教授。2021年からデジタル庁のデジタルエデュケーション統括。専門は教育経済学。著書にビジネス書大賞2016準大賞を受賞し、発行部数30万部を突破した『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

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